同族会社等において、会社が望まないにもかかわらず、会社の株式を、特定の株主が、例えば「同業他社に譲渡したい」と申出があったときに、会社は定款の譲渡制限の規定を根拠に、譲渡承認請求を不承認とすることができます。
しかしそれはすなわち、会社(または指定買取人)が、その株式を買取るという選択をすることを意味し、売買価格をどうするか等が問題となります。具体的には、会社(または指定買取人)は、所定の額を供託した上で、譲渡等承認請求者と価格を協議し、協議が不調となると、裁判所の判断を仰ぐことともなり、現実として、相当の費用負担や労力を要することとなり得ます。
当資料では、その概要をご案内いたします。
<網掛け内【1】【2】【3】は、当事者間の合意にて決定に至るステップ> (条文番号はすべて会社法、「*」は定款で短縮可能)




(1) 価格決定の申立てをする際には、供託が必要となるのか?
売買等の当事者間において、非上場株式等の価格が決定できない等のときに、会社法は、その価格を決定する手段として、当事者の双方またはどちらかが、裁判所に対して、価格決定の申立てをすることができると定めています。
それらの前提となる売買等の中には、例えば、「相続人等への株式の売渡請求(会社法174条)」のような、株主は売りたいわけではないけれども、会社が一方的に売渡請求をするようなパターンもあり、そのような場合は、供託を必要とせず、価格決定の申立てがなされず20日間経過すれば、売渡請求が失効するように定めています。
一方で、当資料のパターン(譲渡不承認による買取)では、会社(または指定買取人)が、買取通知をした時点で、価格未決定のまま売買契約が成立していることとなりますから、最終的に価格決定となるように、供託を必要と定めていると考えられます。
(2) なぜ、簿価純資産価額で供託をするのか?
非上場株式の価額の算定方法が種々存在する中、限られた期間内に会社等に、法定の価額で供託をさせるには「簿価純資産価額」(会社法141条2項、会社法施行規則25条)は、株主の投下資本回収や、価額を把握しやすい点等からも、適当と考えられます。
(協議も不調、簿価純資産価額も「安すぎる」「高すぎる」となっても、当事者各々は、価格決定申立で解決をはかれます。)
(株主からの承認の請求)
第136条 譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く。)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。
(株式取得者からの承認の請求)
第137条 譲渡制限株式を取得した株式取得者は、株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。(以下略)
(譲渡等の承認の決定等)
第139条 株式会社が第136条又は第137条第1項の承認をするか否かの決定をするには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
2 株式会社は、前項の決定をしたときは、譲渡等承認請求をした者(以下この款において「譲渡等承認請求者」という。)に対し、当該決定の内容を通知しなければならない。
(株式会社又は指定買取人による買取り)
第140条 株式会社は、第138条第一号ハ又は第二号ハの請求を受けた場合において、第136条又は第137条第1項の承認をしない旨の決定をしたときは、当該譲渡等承認請求に係る譲渡制限株式(以下この款において「対象株式」という。)を買い取らなければならない。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 対象株式を買い取る旨
二 株式会社が買い取る対象株式の数(種類株式発行会社にあっては、対象株式の種類及び種類ごとの数)
2 前項各号に掲げる事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
3 譲渡等承認請求者は、前項の株主総会において議決権を行使することができない。ただし、当該譲渡等承認請求者以外の株主の全部が同項の株主総会において議決権を行使することができない場合は、この限りでない。(以下略)
(株式会社による買取りの通知)
第141条 株式会社は、前条第1項各号に掲げる事項を決定したときは、譲渡等承認請求者に対し、これらの事項を通知しなければならない。
2 株式会社は、前項の規定による通知をしようとするときは、一株当たり純資産額(一株当たりの純資産額として法務省令で定める方法により算定される額をいう。以下同じ。)に前条第1項第二号の対象株式の数を乗じて得た額をその本店の所在地の供託所に供託し、かつ、当該供託を証する書面を譲渡等承認請求者に交付しなければならない。(以下略)
(指定買取人による買取りの通知)
第142条 指定買取人は、第140条第4項の規定による指定を受けたときは、譲渡等承認請求者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。(中略)
2 指定買取人は、前項の規定による通知をしようとするときは、一株当たり純資産額に同項第二号の対象株式の数を乗じて得た額を株式会社の本店の所在地の供託所に供託し、かつ、当該供託を証する書面を譲渡等承認請求者に交付しなければならない。(以下略)
(譲渡等承認請求の撤回)
第143条 第138条第一号ハ又は第二号ハの請求をした譲渡等承認請求者は、第141条第1項の規定による通知を受けた後は、株式会社の承諾を得た場合に限り、その請求を撤回することができる。(以下略)
(売買価格の決定)
第144条 第141条第1項の規定による通知があった場合には、第140条第1項第二号の対象株式の売買価格は、株式会社と譲渡等承認請求者との協議によって定める。
2 株式会社又は譲渡等承認請求者は、第141条第1項の規定による通知があった日から20日以内に、裁判所に対し、売買価格の決定の申立てをすることができる。(中略)
5 第1項の規定にかかわらず、第2項の期間内に同項の申立てがないとき(当該期間内に第1項の協議が調った場合を除く。)は、一株当たり純資産額に第140条第1項第二号の対象株式の数を乗じて得た額をもって当該対象株式の売買価格とする。
6 第141条第2項の規定による供託をした場合において、第140条第1項第二号の対象株式の売買価格が確定したときは、株式会社は、供託した金銭に相当する額を限度として、売買代金の全部又は一部を支払ったものとみなす。
7 前各項の規定は、第142条第1項の規定による通知があった場合について準用する。(以下略)
(株式会社が承認をしたとみなされる場合)
第145条 次に掲げる場合には、株式会社は、第136条又は第137条第1項の承認をする旨の決定をしたものとみなす。ただし、株式会社と譲渡等承認請求者との合意により別段の定めをしたときは、この限りでない。
一 株式会社が第136条又は第137条第1項の規定による請求の日から2週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内に第139条第2項の規定による通知をしなかった場合
二 株式会社が第139条第2項の規定による通知の日から40日(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内に第141条第1項の規定による通知をしなかった場合(指定買取人が第139条第2項の規定による通知の日から10日(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内に第142条第1項の規定による通知をした場合を除く。)
三 前二号に掲げる場合のほか、法務省令で定める場合
(相続人等に対する売渡しの請求に関する定款の定め)
第174条 株式会社は、相続その他の一般承継により当該株式会社の株式(譲渡制限株式に限る。)を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができる。
藏田 尚哉(代表取締役社長)
佐藤 光(税理士)